ステロイド(ステロ)とは、1-3枚のステロイド向けのアクションカードを除いてお金と勝利点しか買わないプレイング。主役となるステロ向けカードの名前を冠して○○ステロ(鍛冶屋ステロ、仮面舞踏会ステロ)、のように呼ばれることが多い。
アクション連鎖を狙っていくコンボはドミニオンの醍醐味と言ってもよく、サプライによってはコンボが非常に強力である場合も多い。
しかし、コンボが必ずしも強力であるとは限らず、また構築の最終形や手順において初心者には敷居が高いこともある。
比較的単純なプレイングとなるステロを理解することによって、そのサプライにおいてコンボを狙うことが果たしてどの程度有効であるのかを把握しながらも、十分に勝ちを狙うことができるのである。
ドミニオンのアクションカードには様々なものがあるが、ステロ向けのカードとは、基本的には単体でコストに見合うか、或いはそれ以上の生産力をもたらしてくれるカードのことを指している。
ここで何を基準にコストに見合うか?ということを考えるわけだが、多くの場合この基準となるものは銀貨である。銀貨は3コストで購入可能で2金の生産力を持つカードであり、手札の期待値を1金程度高めることで5金が出やすくなるカードである。
なぜ5金が出やすいのか?簡単には、デッキ枚数が15枚になるまでは基本的に3枚の屋敷が1枚は手札に入っている計算になるため、残りが銅貨だと4金しか出ない。1枚銀貨だと5金が出る、というように考えることができるため。
3-4コスト、或いは5コストのカードは、ドローや仮想コイン(財宝ではなくアクションカードのプラスコイン効果によるコイン)などによって銀貨の生産力である2金よりも仕事をしてくれるのか?という観点で以ってステロカードとして有用であるか否かを考えることができる。
銀貨のメリットとして、手札で幾ら被ろうとも腐らず使用することができる、という点が挙げられる。
アクションカードの多くはプラスアクションが付いていないターミナルアクションであり、ステロ向けのアクションはターミナルアクションであるため、あまりアクションカードを買いすぎると手札で被ってしまい片方が腐ってしまう結果となる。
なぜステロ向けのアクションはターミナルアクションなのか?プラスアクションという生産力を持っているカードは、ドローや仮想コインの生産力がその分削られており、アクション連鎖につなげられないならば、単体で高い生産力を持つターミナルアクションに比べて直接の生産力に結び付きにくいため。例えば村というカードは銀貨と同じ3コストで購入可能であるが、村自体はアクションを1つ増やす以上の生産力は持っていない。このため、これに続けて2枚のアクションカードを使用できないならば、村は生産力を持たないことと同じになってしまう。アクションカードを少数しか投入しないステロではアクション連鎖は見込みにくく、プラスアクションは無駄になってしまう。アクションを多数つなぐコンボにおいてはプラスアクションを有効活用することになる。逆の言い方をすれば、アクションをつなぐ気がなく単発で強力なターミナルアクションを使用したいならば、自ずとアクションカードのデッキ内の受け入れ枚数は限られてくることになる。
ドローアクションであるならば、手札5枚だけでなく山札から引いて来たアクションカードも使用できなくなってしまうため、尚更アクションカードを買いすぎてはいけないことになる。
例えそのカードの生産力が銀貨以上である場合でも、使えないアクションを抱えてしまうことは手札に余分な屋敷を抱えていることに等しく、高いコストと購入権を無駄にしているために大きく損していることになる。そのアクションカードが銀貨であるならば、少なくとも2金相当として使用できていることになる。
これが、ステロにおいてアクションカードを1-3枚投入するといった理由である。山札が15枚以下(初期デッキ10枚)ならば、アクションカードが4枚以上あればドローが無くとも必ず被ることになる。
銀貨が有効な価値基準となるもう一つの大きな判断材料として、財宝しか買わないプレイングであるお金プレイの速度を考えたい。
最終的に属州を買うためには手札5枚で8金出さなくてはならない。このためには金貨が非常に重要な役割を持つことになる。
手札5枚で8金出すために必要なデッキの平均金量(カード1枚あたりに期待されるコインの生産量。基本的にはデッキの総金量/デッキの総枚数で計算される)は1.6金であるため、銀貨の生産力である2金もこれを超えている。しかし、銀貨だけで8金出そうと考えると手札5枚中4枚が銀貨である必要があり、銀貨3枚の場合は残り2枚に屋敷が1枚でも含まれていると7金となってしまう。恒常的にこれだけの偏りを起こせるだけの銀貨がデッキに含まれている、という状態は通常ではなかなか想定しにくい。
銀貨は属州を買う邪魔にはならないが、銀貨だけで属州を買うことは難しい。
金貨は単体で3金もの生産力を持っており、これが2枚手札に入ればほぼ確実に、1枚入るだけで格段に属州に届きやすくなる。
このため、お金プレイの手順では、属州への足掛かりとして金貨を目指すことになり、そのための更なる足掛かりとして、まずは銀貨を買うことになる。
5金以下で銀貨、6金以上で金貨、金貨が1枚入った後の8金以上は属州、という手順で機械的に進めた場合(実際のプレイングでは対戦相手との兼ね合いで公領に手を出すタイミング等が存在するがここでは無視する)、属州4枚のノルマを達成するのにかかるターン数は平均17ターン程度である。
なぜ属州4枚がノルマとなるのか?それは、属州の総枚数を人数で割った値が3-4枚になるためである。2-3人戦では最低限引き分けに必要、4人戦では概ね勝ちとなる枚数である。ただし、庭園などの特殊勝利点が存在する場においてはこの限りではない。
お金プレイは、例えどのようなサプライであろうとも必ず選択できる。
つまり、アクションカードを買ったところで、お金プレイよりも属州の獲得が相対的に遅れるならば、そのアクションカードを買う代わりに銀貨を買っておけばよかった、ということになる。
ステロにおいて主役となるアクションカードは、ほぼたいていの場合6コストである金貨よりも安く、基本的な生産力では金貨を下回る(下回らない場合でも、銀貨と同じように手札に何枚入ろうとも腐らない金貨と違い、アクションは腐ってしまう危険性がある)。このため、結局のところ目指す地点が属州購入であることに変わりはないために、ステロプレイにおいてもお金プレイと同じように金貨購入を属州購入の足掛かりとするのである。
ただし、金貨を目指すうえで、その足掛かりとして銀貨しか購入しないお金プレイとは、銀貨よりも期待値が高いと予想される場合には、銀貨の代わりにアクションカードを購入することになる点で異なっている。
逆に言うならば、ステロプレイにおいても追加のアクションの代わりに銀貨購入を判断する場面は多い。
このような理由から、お金プレイはステロプレイの基礎となる戦略であり、また銀貨はアクションカードの購入を判断する重要な基準である、と言える。
今までは属州の購入を目指すことのみに言及したが、実際のプレイでは、対戦相手の状況に基づいて、他の勝利点(通常は公領、屋敷)を買い始めるタイミングというものが存在する。特に、先行逃げ切り型であるステロイドにおいては、属州が買えなくなったデッキで、或いは買うことのできなかったターンに公領を購入するか、或いは更なる属州購入のための追加の金貨を購入するか、の判断が重要となる。
状況次第であるところが大きいが、属州ノルマである属州3-4枚を既に買えている、或いは、ゲーム終了までに購入が可能であると考えられる場合には、金貨ではなく、公領を購入していくことになる。
目安として、残り属州枚数(と周囲の状況)から、デッキがあと1順もしない場合は、金貨を購入することは悪手である。なぜならば、金貨が来た手札が8金であったとして、その金貨が代わりに公領であったとしても、5金で公領を購入できている。これは、点数で見ると同じ効率となっている。金貨が終了までに手札に来なければ、3点損していることになる。もちろん、自分が積極的に属州を枯らさなければゲームが終了しない場合など、必ずしもこの限りではない。